iOS 17.2がリリース。新アプリ「ジャーナル」とは

iOS 17.2がリリース。新アプリ「ジャーナル」とは

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Appleは2023年12月12日(火)に、iOS 17.2とiPad OS 17.2をリリースしました。今回のアップデートでも様々な機能が追加されましたが、筆者が一番興味を引かれた追加機能は「ジャーナル」という新アプリです。

ジャーナルは、日々の瞬間や人生の大切な出来事をテキストベースで書きとめることができ、そこに写真、ビデオ、録音した音声、位置情報などを含め、記録として残すことができるいわゆる「日記アプリ」です。

従来の日記アプリとジャーナルの違うところは、デバイス上での機械学習により、個人に合わせてパーソナライズされた提案をユーザーに示し、ジャーナル入力のきっかけを与えることです。提案は、ユーザーがデバイス上で行った写真撮影、電話、位置情報、ワークアウトなどを元に作成されます。これにより、従来の日記付けで起こりがちな「今日は何があったっけ?」と思い出す最初の作業を簡略化することができます。もちろん、ルーティンワークアプリによくあるリマインダー機能もあります。

機械学習を利用した提案
リマインダー

ジャーナルでは、シンプルなテキスト入力はもちろん、写真、ビデオ、録音した音声、位置情報などのより多くの背景情報を加えることもできます。なおリリース時点においては、日記の記入画面はとてもシンプルです。またニュース記事、音楽、ポッドキャストなどのコンテンツをほかのアプリからジャーナルアプリに挿入して、それについて書くことも簡単です。

日記の記入画面
Spotifyからジャーナルに挿入

個人の日記というものはプライベートな情報の塊です。ジャーナルでは、iPhoneがパスコードでロックされている場合、ジャーナルアプリ上に作成した情報は暗号化されます。さらに、デバイスのパスコード、Face ID、またはTouch IDでジャーナルアプリ自体に認証を付けることもできます。

また作成されたすべてのジャーナルは、iCloudに保存される時にエンドツーエンド (E2EE) で暗号化され、ユーザー以外はアクセスすることはできません。デバイス上で生成された提案も、提案されているどのモーメントをジャーナルアプリで共有し、ジャーナルに追加入力するかを自分で選択できます。

このような日記アプリをAppleがリリースした理由は、近年メンタルヘルスの分野に力を入れていることと関係しているようです。2023年4月21日に、The Wall Street Journalが、Appleはユーザーが日々の活動を記録できる日記アプリを計画していると報道しています。

とはいえ、なぜ日記と思われるかもしれません。しかし、実は日記のように言葉を書き出すジャーナリングは、脳に良い影響を与えるとの研究がいくつも報告されています。例えば週に3日、1日に15分ポジティブな日記を書くだけで、1ヶ月後には抑うつ症状や不安が軽減されたとの発表もあります。

ヘルステック領域で躍進するAppleにとっては、プライバシーの問題以外で特別高い障壁もない日記アプリの分野はとても参入しやすいものだったのかもしれません。

しかし、ジャーナルが既存の日記アプリより優れているかというと必ずしもそうではないと思います。

例えば、iOSで使える日記アプリというとDay Oneが代表的ですが、ジャーナルがこのアプリに勝っているのは、すべて無料で使えるという点だけのように思います。

Day One

ジャーナルでは、全ての投稿がタイムライン形式で並べられます。ソート機能はありますが「すべての投稿を表示する」か「ブックマークした投稿を表示する」の2択であるため、投稿が増えていくほど過去の振り返りに向かなくなります。一方でDay Oneは様々な方法で過去の投稿を振り返ることができます。

このことからジャーナルは、機械学習による提案という目新しさはありますが、シンプル故にユーザー側で操作可能な機能は限られており、既にアプリで日記を付けていた人が移行するというメリットは現状ないように思います。

またAppleもそれを理解してか、ジャーナルの機能としてJournaling Suggestions APIというもの提供しています。これはジャーナルのオンデバイス上で動作する機械学習による提案機能を、他のアプリでもプライバシーを保護した形で実装できるというものです。実際にDay Oneでは2023年12月12日、つまりジャーナルのリリースと同じ日に、このAPIを利用した最新バージョン 2023.25をリリースしています。


iOS 17.2でリリースされた新アプリ「ジャーナル」は、Appleからユーザーへの新しいヘルスケアの提案ではありますが、現状においては未完のアプリという印象が強いです。

前述しましたが、既存の日記アプリ利用者が乗り換えようと思うほどの魅力は薄く、またこれまで日記アプリを利用していなかったユーザーが、このアプリに満足するかというとそうでもない気がします。

今後のアップデートによる改良を期待しましょう。

以上、新アプリ「ジャーナル」についてでした。

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